「二週間前まで」を数える条文はどこにあるか — 週の期間だけ、乗る明文が1本足りない
株主総会の招集通知は「株主総会の日の二週間前までに」発しなければなりません(会社法299条1項)。雇用契約を労働者の側から解除するときの予告も「二週間前に」です(民法626条2項)。
手続きの条文は、期限を週で書くことがよくあります。会社法の全文を数えると「週間」という語は131か所ありました。うち35か所は「◯週間前までに」の形です(二週間前26・一週間前7・三週間前2)。
前向きの「◯日以内」の数え方は民法140条から142条までにあり、遡る「◯日前まで」は国税庁の通達に明文がありました(それぞれ「3日以内」はいつ切れるかと「◯日前まで」はどう数えるかにまとめてあります)。ではその「二週間」は、どの条文に乗って数えるのでしょうか。
原文を取って確かめたところ、週という単位は条文の中で2回落とされていました。 1回目は筋の通った省略です。2回目も、書かれている法律の中では無害でした。穴になるのは、その2回目が外へ持ち出されたときです。
週は「暦に従う」組にいるのに、暦の乱れを受けない
民法143条を引きます。e-Gov法令検索から全文を取りました。
(暦による期間の計算)第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
週は、月・年と同じ「暦に従って計算する」組に入っています。月や年でこれが効くのは、暦の側が揃っていないからです。1月31日の1か月後は暦に無いので、ただし書が「その月の末日に満了する」と受けます(この話は応当日・満了日の計算の側にあります)。
ところがそのただし書は「月又は年によって期間を定めた場合において」と書いてあり、週を含んでいません。 これが1回目の脱落です。週の応当日は必ず同じ曜日なので、暦に無い応当日というものが生まれません。条文の側が「週には要らない」と判断した、筋の通った省略です。
条文がそう作られている以上、計算の形も決まります。週で定めた期間の末日は、2項の本文だけで決まり、必ず起算日の前日と同じ曜日に落ちます。2026年の365日それぞれを初日として、1・2・3・4・8・52週の6通りを計算しました。2190件すべてで、末日の曜日は初日と同じでした。
同じ2190件で「n週間」と「7n日」の末日を突き合わせると、食い違いは0件です。答えだけを見れば、週は7を掛けた日数と変わりません。乗っている条文が違うだけで、そこに違いが出るのは、法律の側が週を別扱いしたときだけです。
遡る向きになると、明文が1本足りなくなる
遡る期間の数え方を明文で書いているのは、国税通則法基本通達(徴収部関係)の第10条関係2でした。
前に遡る期間の計算は、法第10条第1項の規定を準用して計算するものとする。
注が国税徴収法95条1項の公売公告を例に取り、「その公売の日の前日を第1日として、遡って10日目の日に期間が満了する。したがって、その前日の11日目の日までに公売公告をしなければならない」としています。第1日は基準日の前日で、行為の期限は末日のさらに前日。ここまでは前の記事で数えたとおりです。
問題は、準用しているのが国税通則法10条1項だというところです。その書き出しを引きます。
第十条 国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。
「日、月又は年」で、週がありません。 民法140条が「日、週、月又は年によって期間を定めたときは」と4つ並べているのと見比べると、落ちているのがはっきりします。これが2回目の脱落です。
念のため、国税通則法の全文で「週」の字を数えました。1回も出てきません。 国税の手続きに週で定めた期間が無いのなら、1項に書かないのは無害な省略です。
無害でなくなるのは、この通達を国税の外へ持ち出したときです。遡る期間の数え方を明文で書いた場所はほかに見当たらず、実務はここを参考にします。ところがその入口が「日、月又は年」で閉じているので、「二週間前までに」はそのままの形では入れません。国税の中では無害だった省略が、外へ出た瞬間に穴へ変わります。
それでも数えられる — 143条2項を遡る向きに当てる
明文が無くても数えないわけにはいきません。ここでやっているのは、2つの別々の場所から半分ずつ借りることです。期間の長さは民法143条2項から取ります(週の応当日は同じ曜日なので、二週間は14日です)。遡る数え方は通達2から借ります(第1日は基準日の前日・行為の期限は末日のさらに前日)。
143条2項そのものを遡る向きへ裏返さないのは、条文が「応当する日の前日に満了する」と前向きにしか書いていないからです。裏返した位置に出てくる日は、下の表の期限と同じ日になります。答えは変わりませんが、別の意味の日として並べると読み違いのもとになります。
株主総会を2026年6月26日(金)に開く場合で数えます。
| 手順 | 日付 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第1日 | 6月25日(木) | 総会の日の前日から始める(通達2) |
| 遡って14日目 | 6月12日(金) | ここで期間が満了する(末日) |
| 通知を発する期限 | 6月11日(木) | 末日のさらに前日(通達2の注の型) |
答えは総会の日の15日前です。「二週間前」という文字から14を引くと6月12日になり、1日遅れます。
この6月11日と6月26日のあいだには、どちらも数えずに14日が空きます。実務でいう「中14日」と一致しました。遡る期間では、条文に書かれた数がそのまま「あいだに空ける日数」になります。日で書かれた公売公告の例も、10日前までで中10日でした。
もう1つ、曜日にも規則が出ます。遡る向きの期限は、週数がいくつでも基準日の1つ手前の曜日になります。 第1日で1日ぶん戻り、そこから7の倍数だけ動くからです。総会が金曜なら通知の期限は木曜、水曜なら火曜。週数を1から3に変えても、この関係は変わりません。
末日が休みのとき、送りの規定は3つある
末日が土日祝に当たったらどうするか。ここで初めて、法律ごとの違いが答えを変えます。
| 規定 | 休みに数える日 | 条件 | 条文の階数 |
|---|---|---|---|
| 民法142条 | 日曜・祝日・その他の休日 | 「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」 | 条文1本 |
| 国税通則法10条2項 | 日曜・祝日・一般の休日・政令で定める日 | 条件なし | 条文+施行令+通達の3階建て |
| 民事訴訟法95条3項 | 日曜・土曜・祝日・1月2日・3日・12月29日から31日 | 条件なし | 条文1本 |
民訴法95条3項の原文はこうです。
期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。
民法142条から「慣習」の条件を落とし、土曜日と年末年始を条文の中で名指ししています。 国税の側は、同じ集合を作るのに施行令と通達まで降りる必要がありました(その経緯は期限が休日に当たったら、送るとは限らないにあります)。こちらは条文1本で完結しています。しかも「期間の末日」としか書いていないので、週で定めた期間にもそのまま働きます。
2026年の暦で、民訴法95条3項でだけ休みになる日を数えると4日でした。1月2日(金)・12月29日(火)・30日(水)・31日(木)です。1月3日は2026年には土曜なので、民法の読み方でもすでに休みに入ります。
では会社法はどうか。全文を検索しても「休日」という語が1回も出てきません。 自前の送りの規定を持たないので、民法138条により142条だけが残ります。つまり「二週間前までに」の末日が休みに当たったとき、条文が用意しているのは「慣習があれば翌日へ」だけです。遡る期限で翌日へ送ると、総会までの間隔が二週間を割ります。 前へ戻す扱いは、国税の通達のただし書にはありますが、会社法の側には何もありません。
週で数えると、送りが起きるかどうかは初日の曜日で決まる
末日が初日と同じ曜日に落ちるという性質は、実務では別の形で現れます。判決の送達を受けた日から2週間が控訴期間です(民訴法285条・不変期間)。2026年の各日を送達日として、末日が95条3項の休みに当たった日数を数えました。
| 送達を受けた曜日 | 末日が休みだった日数 |
|---|---|
| 日曜 | 52日中52日 |
| 月曜 | 52日中7日 |
| 火曜 | 52日中5日 |
| 水曜 | 52日中5日 |
| 木曜 | 53日中1日 |
| 金曜 | 52日中2日 |
| 土曜 | 52日中52日 |
送達を受けた曜日だけで、送りが起きるかどうかがほぼ決まります。 末日は必ず同じ曜日なので、土日に受ければ必ず送られ、平日に受ければ祝日と年末年始に当たったときだけ送られます。
この性質には、条文を書く側から見ると厄介な面があります。期間の長さを変えても曜日は動きません。 二週間を三週間に延ばしても、四週間にしても、末日は同じ曜日のままです。土曜に落ちて具合が悪いときも、週数をいじって直すことはできません。日で書けば動きます。2026年1月1日(木)を初日にすると、10日以内の末日は日曜、14日以内は木曜、20日以内は水曜、30日以内は土曜と変わります。
同じことを遡る向きで数えると、量が見えます。2026年の365日それぞれを総会の日として、会社法299条1項の通知の期限を出したところ、121日ぶんで期限が土日祝に当たりました。 3日に1日の割合です。条文がその日をどう扱うのかは、先ほどのとおり書かれていません。
自分の場面では、どう読むのか
ここまでを踏まえると、順番はこうなります。
- 定款・契約書・募集要項に数え方が書いてあれば、それが優先します(民法138条)。まずそこを見ます
- その手続きを定めた法律に、自前の期間計算や休日の規定があるか探します。民事訴訟なら95条があり、国税なら10条があります
- どちらも無ければ、民法143条2項で数え、末日の送りは142条だけが残ります。送る向きは条文に無いので、余裕を持たせる側へ倒すのが安全です
「二週間前までに」を数えるときに手元で確かめられるのは、中◯日です。条文の数がそのままあいだの日数になるので、出した期限と基準日のあいだを数え直せば、1日のずれはその場で見つかります。
数えるための道具
日数計算の「◯日以内の期限」と「◯日前までの期限」に、単位の選択を足しました。前向きの週では143条2項の応当日と末日を並べて出し、遡る向きでは中◯日と、明文が1本足りないことを添えます。
この記事の数字は、条文をe-Gov法令検索の原文で確かめ、暦の計算はこの道具と同じ祝日エンジンで出しています。数え方そのものはゴールデンテストで留めてあり、「n週間」と「7n日」が一致することも、末日の曜日が初日と揃うことも、2026年の全日ぶんを毎回の検証で照合しています。