振替休日と「国民の休日」は別物 — 2つの休日の作られ方
2026年5月6日は水曜日ですが、休みです。5月3日の憲法記念日が日曜日に当たったことの振り替えです。ただし振り替えられた先は翌日の5月4日ではなく、3日も後の5月6日でした。
同じ2026年の9月22日も休みです。こちらは振り替えではありません。前後を敬老の日と秋分の日に挟まれているからです。
内閣府が公開している祝日の一覧を開くと、この2日はどちらも「休日」とだけ書かれています。名前では区別がつきません。 1955年から2027年までの1,067行を数えると、この「休日」は116件あります。規則にあてはめて分けると、振替休日が96件、国民の休日が20件でした。同じ名札の下に、成り立ちの違う2種類が混ざっています。
条文には、どちらの名前も出てこない
国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)の全文をe-Gov法令検索から取得して、文字列を数えました。「振替休日」は0回、「国民の休日」も0回です。どちらも条文には無い通称で、法律が書いているのは第3条の3つの項だけです。
第三条 「国民の祝日」は、休日とする。 2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。 3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は、休日とする。
2項が振替休日、3項が国民の休日と呼ばれているものです。読み比べると、2つの項はどちらも「国民の祝日」という言葉を軸に書かれていて、「休日」とは書いていないことが分かります。この使い分けが、後で効いてきます。
振替休日は「翌日」とは限らない
2項は「その翌日」ではなく「その日後においてその日に最も近い『国民の祝日』でない日」と書いています。日曜日の次の日がすでに祝日なら、そのまた次の日を見にいきます。
5月3日が日曜日に当たった年を全部並べると、2007年を境に答えが変わります。
| 年 | 5月3日(日) | 5月4日 | 5月5日 | 5月6日 |
|---|---|---|---|---|
| 1981・1987・1992・1998 | 憲法記念日 | 休日 | こどもの日 | 平日 |
| 2009・2015・2020・2026 | 憲法記念日 | みどりの日 | こどもの日 | 休日 |
前半の4年では、5月4日はまだ祝日ではありませんでした。だから振替休日は翌日にそのまま置かれています。後半の4年では、5月4日がみどりの日で、5月5日がこどもの日です。2日とも祝日なので飛び越えて、3日後の5月6日まで送られました。
5月4日のほうが日曜日に当たった年も同じ形になります。2008年・2014年・2025年では、翌日の5月5日が祝日なので、振替休日は2日後の5月6日です。
1955年から2027年までの全期間で、翌日以外へ送られた振替休日は7件でした。日付はすべて5月6日です。5月3日から5日まで祝日が3日続く並びは、日本の暦でここだけだからです。
2007年に何が起きたのか
7件が全部2008年以降に集まっている理由は、2007年から5月4日が「みどりの日」という祝日になったことです。それまでの5月4日は祝日ではありません。日曜日でなければ国民の休日として休みになる日でした。
祝日法の附則には、平成17年法律第43号による改正が平成19年1月1日から施行されたと書かれています。2007年です。この年を境に、5月3日から5日までが「祝日・祝日・祝日」の並びになりました。
2007年より前に2項がどう書かれていたかは、今回は一次情報で確かめられませんでした。 e-Gov法令検索が返すのは現行の条文で、改正法そのものを引く手立てが見つかりませんでした。確かなのは、内閣府の一覧から読み取れる次の2つです。翌日以外へ送られた振替休日は2008年より前に1件も無く、5月4日が祝日として載るのは2007年からです。
国民の休日は、挟む側が祝日でなければならない
3項は「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日」と書いています。「休日」ではありません。振替休日は休日ではあっても国民の祝日ではないので、何かを挟む側には回れません。
条文が「国民の祝日」で揃えられている意味がここに出ます。もし「前日及び翌日が休日である日」と書かれていたら、振替休日の隣も国民の休日になり、休みが芋づる式に増えていきます。2項と3項は、どちらも入口を祝日に限ることで連鎖を止めています。
内閣府の一覧から国民の休日にあたる20件を拾うと、内訳はこうなります。
| 日付 | 件数 | 挟んでいる祝日 |
|---|---|---|
| 5月4日 | 15件(1988〜2006年) | 憲法記念日と こどもの日 |
| 9月22日 | 3件(2009・2015・2026年) | 敬老の日と 秋分の日 |
| 4月30日・5月2日 | 2件(2019年) | 昭和の日・天皇の即位の日・憲法記念日 |
5月4日が15件で打ち止めになっているのは、2007年にその日が祝日そのものになったからです。振替休日が遠くへ飛ぶようになったのと、国民の休日が5月から消えたのは、同じ改正の裏表です。
なお1980年・1986年・1997年・2003年の5月4日は日曜日で、一覧に載っていません。祝日に挟まれていても、日曜日は休日として数えられていませんでした。
2019年は、2つの規則が同時に働いた
10連休になった2019年のゴールデンウィークは、この2つが重なった例です。
| 日付 | 曜日 | 内訳 |
|---|---|---|
| 4月27日・28日 | 土・日 | 週休 |
| 4月29日 | 月 | 昭和の日 |
| 4月30日 | 火 | 国民の休日(昭和の日と即位の日に挟まれた) |
| 5月1日 | 水 | 天皇の即位の日(特例法による祝日) |
| 5月2日 | 木 | 国民の休日(即位の日と憲法記念日に挟まれた) |
| 5月3日・4日・5日 | 金・土・日 | 憲法記念日・みどりの日・こどもの日 |
| 5月6日 | 月 | 振替休日(5月5日が日曜日だった) |
内訳は祝日5日・休日3日・週休2日です。真ん中に5月1日を置いたことで、その両隣が3項で休日になりました。
このとき使われた法律の書き方が、2項と3項の入口が「国民の祝日」であることの意味をよく示しています。天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律(平成30年法律第99号)は、本則ではこう書くだけです。
天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日は、休日とする。
これだけなら5月1日は休日であって祝日ではないので、4月30日と5月2日は挟まれた日になりません。 そこで附則の第2条が、わざわざ次の一文を足しています。
本則の規定により休日となる日は、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する国民の祝日として、同法第三条第二項及び第三項の規定の適用があるものとする。
この一文が無ければ、10日の連休にはならず、3連休と1日と4連休の飛び石に割れていました。 同じ附則の第2項では、祝日法以外の法令に対して「休日」として扱うと分けて書いています。休日と祝日の使い分けは、条文を書く側にとっても意識的な区別です。
実はもう1種類ある
祝日でも振替休日でも国民の休日でもない休みが、過去に3日だけあります。
- 1989年2月24日 — 昭和天皇の大喪の礼
- 1990年11月12日 — 即位礼正殿の儀
- 1993年6月9日 — 結婚の儀
いずれもその日限りの単独の法律で定められたもので、祝日法の第2条には入っていません。3日とも金曜・月曜・水曜で、日曜日に当たっておらず、前後に祝日もありません。だから振替と挟まれた日の扱いは、実際には一度も問題になっていません。(この3つの法律の条文そのものは、いまのe-Gov法令検索からは引けませんでした。効力を失った法律だからだと思われます。)
この3件は数が少なく、しかも互いによく似ています。似ているものが3つあると、2つ揃っているだけで「その種類は見ている」と思ってしまいます。 この道具棚の祝日エンジンでも、1990年と1993年は入っていたのに1989年だけが抜けていました。内閣府の一覧と全期間を1日ずつ突き合わせる検査を書いて、はじめて見つかりました。
実務でどう扱うか
- 「振替休日は翌日」と決め打ちしない。 5月3日が日曜日の年は3日後、5月4日が日曜日の年は2日後になります。2026年の次に飛ぶのは2031年(5月4日が日曜で、振替は2日後の5月6日)、3日後まで飛ぶのは2037年です。なお2030年は5月5日が日曜日なので、翌日の5月6日に素直に置かれます。
- 一覧の「休日」を名前で分けようとしない。 内閣府のCSVは振替休日と国民の休日を区別しません。分けたいなら、前後の日が祝日かどうかを自分で見る必要があります。
- 役所の窓口はどちらも閉まっている。 行政機関の休日に関する法律の第1条は、土日と「国民の祝日に関する法律に規定する休日」、それに12月29日から1月3日までを閉庁日としています。振替休日も国民の休日も、この2号に含まれます。
- 祝日が動けば休日も動く。 敬老の日が9月15日で固定されていた時代に、9月の国民の休日は一度も成立していません。詳しくはハッピーマンデーで祝日はどこへ動いたかに書きました。
この棚の連休カレンダーは、2つの規則を分けて計算したうえで連休の日数を数えます。営業日計算と日数計算も同じ規則を共有しているので、年をさかのぼっても答えが揃います。