軽減税率8%の線引き — 同じ商品で税率が変わる場面
レジで「店内でお召し上がりですか」と聞かれるのは、接客ではなく税率の確認です。軽減税率8%と標準税率10%の境目は、商品そのものではなく売り方と場面で決まります。同じ棚の同じ品でも、受け取り方ひとつで税率が動きます。税額そのものは消費税・割引計算で出せますが、この記事では「どちらの税率なのか」を決める側を追います。
8%になるのは2種類だけ
軽減税率の対象は、法律上たった2種類です。ひとつは飲食料品で、もうひとつは定期購読契約に基づく新聞です。新聞のほうは週2回以上発行されるものに限られます。コンビニで1部だけ買う新聞は定期購読ではないため、10%になります。
飲食料品の側にも2つの穴が空いています。酒類は対象外で、外食も対象外です。この2つを差し引いた残りが8%になります。医薬品と医薬部外品も食品表示法でいう食品に当たらないので、10%です。栄養ドリンクの棚で税率が2種類混ざるのはこのためです。指定医薬部外品と書かれたものは10%、清涼飲料水として売られているものは8%になります。
なお同じ「8%」でも中身は入れ替わっています。2019年9月までの8%は国税6.3%と地方税1.7%でした。いまの軽減8%は国税6.24%と地方税1.76%です。客が払う額は同じでも、事業者の申告では別の区分として扱います。
イートインとテイクアウトは提供時点で決まる
外食に当たるかどうかは、飲食設備のある場所で飲食させる役務かどうかで判定します。ここで効いてくるのが判定の時点です。国税庁の考え方では、商品を提供する時点で顧客の意思を確認して決めます。持ち帰ると答えて8%で買った人が、あとで気が変わって店内で食べても、遡って10%にはなりません。レジで毎回聞かれるのは、この意思確認そのものです。
似た形でも結論の分かれる組み合わせがあります。出前や宅配は、料理を届けるだけなので単なる譲渡と見なされ8%です。一方ケータリングは10%になります。相手の指定した場所へ出向いて、加熱や盛り付けや給仕まで行うためです。運ぶだけなら8%、その場で手を動かすなら10%と考えると、境目の位置が見えます。
税込価格を揃えると本体価格がずれる
2021年4月からは総額表示が義務です。値札に出る数字は税込額なので、店内と持ち帰りで税率が違うと同じ商品に値札が2つ並ぶことになります。これを嫌って、税込価格を片方に揃えた店がありました。揃えると何が起きるかを手で計算してみます。
税込540円に統一した場合で見ます。持ち帰りは8%なので、本体価格は540×100÷108でちょうど500円です。店内は10%なので、540円を作る本体価格は491円になります。490円では539円にしかならず、540円には届きません。
| 受け取り方 | 税率 | 本体価格 | 消費税 | 支払額 |
|---|---|---|---|---|
| 持ち帰り | 8% | 500円 | 40円 | 540円 |
| 店内 | 10% | 491円 | 49円 | 540円 |
客の払う額はどちらも540円です。それでも店に残る本体価格は9円違います。逆に本体価格を500円で揃えると、支払額が540円と550円に分かれます。どちらを揃えても、片側は必ずずれます。総額表示と2つの税率は、そもそも同時には成り立ちません。
おもちゃ付きのお菓子は「3分の2」で決まる
食品と食品以外があらかじめ一体で売られていて、値札もひとつしかないものを一体資産と呼びます。おもちゃ付きのお菓子や、カップと紅茶の詰め合わせが当たります。これには数値の基準があります。税抜価額が1万円以下で、かつ食品部分の価額の割合が3分の2以上なら、全体を8%として扱えます。
税抜900円の詰め合わせで確かめます。食品部分が600円なら、900円の3分の2はちょうど600円なので条件を満たし、全体が8%です。消費税は72円になります。食品部分が590円だと割合は約65.6%で、3分の2に届きません。全体が10%になり、消費税は90円です。食品部分の10円の差が、消費税では18円の差になります。
酒類の線引きも似た緊張感があります。本みりんはアルコール分が14度前後あり、酒税法上の酒類なので10%です。みりん風調味料はアルコール分が1%未満で酒類に当たらないため、8%です。並んだ2本の瓶の税率が違うのは、味ではなく度数の話です。
まとめ
- 8%になるのは飲食料品と定期購読の新聞だけで、酒類・外食・医薬部外品はここから外れます。
- イートインかテイクアウトかは提供時点の意思確認で決まります。あとから変えても遡りません。
- 総額表示と2つの税率は両立しません。税込を揃えれば本体がずれ、本体を揃えれば支払額がずれます。
- 一体資産は税抜1万円以下かつ食品部分3分の2以上という数値基準で、全体の税率がまとまって動きます。
- 税率が決まったあとの端数の扱いは消費税の端数処理はなぜ店ごとに違うのかに書きました。